そんなこんなで、指定された時刻を5分ほど過ぎた頃。

「ちっ……」

自分から呼び出しておいて遅刻とか、

相手はなに考えてんの?

イライラするわね、ったく……。

「なかなか来ないね……日付、間違ってたのかな?」

「そんなアホだったら、会わなくて正解よ。

 大体、遅れるなら遅れるでひと言あって

 然るべきでしょーが」

「りっちゃん、厳しいなぁ」

「厳しくない。それが礼儀よ」

そんな話をしている間にも、

刻一刻と待ち合わせ時間は過ぎていく。

……だめだ、もう耐えらんない。

「帰ろ、愛衣佳」

「え……ええっ!?
 りっちゃん、こらえ性がなさ過ぎるよぉ!」

「遅れた向こうが悪いんでしょ。

 残念ながら、縁が無かったってことで」

「でもでも、何か急な用事があって
 遅れてるのかもしれないし……」

「好きな子に告白する以外に大事な用事って、何よ?」

「うう、そ、それはぁ……夕飯のお買い物とか?」

「昨日のうちに買っておきなさい!」

「ううう、でもでもぉ……」

どこの誰かもわからないって言うのに、

必死でフォローする愛衣佳。

お人好しというか、純粋というか……。

「はぁ……わかったわよ。
 んじゃ、あと5分だけね」

「りっちゃん……うんっ!」

とか思いつつも、アタシだって愛衣佳には

甘すぎる気がするけど。

「そう言えば愛衣佳ってさ」

「ん?なぁに?」

「あー……ええと。告白される前からこんなこと聞くのも
 アレなんだけど……」

「処女だよ?」

「そう言うことを聞きたいんじゃない!
 というか、別に言わなくてもいいわよそれ!」

「りっちゃん、聞きたそうにしてたから……」

「してない!
 もう……そうじゃなくて、恋愛について聞きたかったの」

「恋愛?」

「そっ。今日の相手がどうこうってわけじゃないけど。
 そもそも愛衣佳、今まで恋愛ってしたことある?」

「あ~……恋愛かぁ。恋愛……うーん」

「……そんなに考えるようなこと?」

「男の子に対してムラムラッてしたら、恋愛かな?」

「それは単なる欲情でしょ」

「じゃあ、どうなったら恋愛?」


【律】




【愛衣佳】

【律】



【愛衣佳】

【律】




【律】

【愛衣佳】


【律】


【愛衣佳】


【律】

【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】




【律】


【愛衣佳】



【律】

【愛衣佳】

【律】


【愛衣佳】

【律】


【愛衣佳】

【律】


【愛衣佳】

【律】


【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】

「そ、それは、えーと……」

「うんうんっ」

なんだか知らないけど、答えようとするアタシへ、

期待に満ちた眼差しを向ける愛衣佳。

この様子だと、もしかしたら初恋もまだなのかもしれない。

自分から振った話題の手前、答えないとダメそうだし……。

うう、恥ずかしいけど仕方ない。

「そ、その……相手のことを考えて、ドキドキしたり?」

「どきどき?」

10歳くらい年上で、小さい頃によく遊んでくれてた

従兄弟のお兄ちゃんを思い出しながら答える。

昔から男勝りで、実際に力も強かったアタシのことを

優しく女の子扱いしてくれたのが嬉しくて。

お兄ちゃんはもう結婚しちゃったけど、あの時のことを

思い出すと、今でも少し心がうずく。

「気がついたら、昼も夜も相手のことばかり考えてて、
 ドキドキするんだ。
 こう、胸の奥が熱くなるような……って」

あ、アタシは何を言ってるんだ!?

やばい、恥ずかしい。

こんなの、キャラじゃないでしょっ!

「な、なーんて。アタシもよくわかん、」

「そっかぁ。それならあるよ?」

「ない……って、え?」

愛衣佳が、思いも寄らないひと言を漏らす。

「ある……って、恋愛経験が?」

「恋愛かどうかはわからないけど、いつもその人のことを
 考えていれば良いんでしょ?」

「良いんでしょ、って。ずいぶんザックリしてるけど……。
 ま、まぁそうね」

「んふふ。それじゃあ、1人しかいないよぉ」

「へぇ、そうなんだ……うちの学校?」

「うんっ」

その答えに、ピクリと反応してしまう。

恋愛のことなんかろくにわからない愛衣佳に、好きな人……?

いつもアタシと一緒にいる愛衣佳が、

いつの間にそんな人を作ってたの?

「だれのこと?」

気がついたら、相手のことを問いただしていた。

何か、心の中でモヤモヤとした感情が渦巻くのがわかる。

聞いてどうしようって言うの、アタシは?

応援したいの? それとも……。

そんな、自分も知らないアタシの中の感情に

戸惑っていると。

「りっちゃんだよ?」

【律】

【愛衣佳】






【律】

【愛衣佳】







【律】






【律】

【愛衣佳】

【律】


【律】

【愛衣佳】


【律】


【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】





【律】







【愛衣佳】

「……は?」

そう、当然のことのように愛衣佳は答えていた。

「ちょ、あ、愛衣佳……?」

「だから、私が恋しているのはりっちゃん!」

「え、えーと……一応聞いてみるけど。
 なんでアタシ?」

「だって、いつも考えている相手でしょ?」

「そうだけど。
 ドキドキはどうしたのよ」

「あのね、前に借りた本、麦茶こぼして汚しちゃったの。
 怒られるかな……って思うと、胸の奥が熱くなってきて」

「ちょっ……よ、汚したですって!?」

もう読み終わったようなこと言ってたのに、

なかなか返さないと思えば……。

「わ、わわわっ!ごめんなさぁい、わざとじゃないのぉ!」

「愛衣佳、アンタねぇ……!」

って、いけないいけない。

叱るのは後にして……それよりも。

「はぁ……で?だから昼も夜もアタシのことを考えて、
 ドキドキしてたの?」

「うんっ。ね、これって恋でしょ?」

「…………」

「けど、まさか自分がソッチの人だなんて
 思いもしなかったなぁ。
 世の中、不思議なことってあるんだね」

「……愛衣佳。ひとつ良い?」

「え、なになに?もしかしてりっちゃんも、
 私のことを……とか?」

自分で言って、軽くその気になってしまったのか。

……心なしか、アタシを見る視線が熱い。

だから、そんなこの子にピッタリの言葉を告げる。

「あんた、バカでしょ」

「ば、バカじゃないよぉ!天然なの!」

「自分で天然て言う天然はいないわよ。
 残念だけど、愛衣佳はバカなの。バカにしてる訳じゃ
 ないわ。でもバカだから仕方ないでしょバカ?」

「バカって沢山言ったぁ!りっちゃんひどい~」

本当にバカなのだから、仕方ない。

「はぁ……安心しなさい、愛衣佳。
 アンタ、多分だけど初恋もまだだから」

「ええ、そうなのっ!?ムラムラはするのにっ!?」

「だからそれは、恋愛じゃなくて単なる欲情だから」

欲求不満なの、この子?

「そっかぁ、恋じゃないんだぁ……ま、なんでもいっか。
 りっちゃんがいれば、毎日が楽しいし」

そんな、こちらまで照れるようなことを

臆面も無く言う愛衣佳。

「って、あれ?それってつまり、
 今日のお返事は―――」

【律】


【律】

【愛衣佳】

【律】


【愛衣佳】

【律】


【愛衣佳】


【律】



【愛衣佳】

【律】





【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】



【律】

【愛衣佳】





【律】

【愛衣佳】

【律】



【愛衣佳】


【律】


【愛衣佳】

【律】


【愛衣佳】




【律】

「ごめんごめん、遅れちゃったよー」

と、こんなタイミングで現れる例の

愛衣佳を呼び出したらしき男。

「わわわっ……き、来ちゃったよ、りっちゃん!」

「なんで愛衣佳が焦ってんのよ。
 そりゃ呼び出したんだから、来るでしょうが」

……とは言った所で。

遅刻したからなぁ、この男。

理由によっては、力尽くでの説教をしてやらないと。

「初めまして、香蕉愛衣佳さん。俺は2組の尾畑圭一」

「あ、うんっ。初めまして……?」

「? どうしたの、香蕉さん?」

「その……どうして、私の名前を知ってるのかなぁ?
 って」

「手紙出すくらいなんだから、知ってて当然でしょうが……」

「あ、そっかぁ」

本当、この子は……。

やっぱりおバカだわ。

「はは、香蕉さんって個性的だね」

「えー、しっかりしてると思うんだけどぉ」

自分で思ってるだけじゃないの……。

その発言自体がしっかりしてないわよ。

……と、思うも余計なことは言わないように

とりあえず黙っておく。

「えーと。それで……そちらは?」

尾畑、と名乗った男がアタシの方を見ながら言う。

「りっちゃんです!」

「りっちゃんさん?」

初対面の相手に愛称で言っても、

わかるわけないでしょうが……。

「伊佐美律よ。この子が、1人じゃ不安だって言うから
 付いてきただけ」

「あー、なるほどね。仲良いんだ?」

「まぁ、そこそこ」

「しんゆーだよねっ!」

「…………」

この噛み合わなさ具合が、

仲の良い証拠なのかもしれないけど。

「ははは、2人は良いコンビなんだね」

「ふふ、お似合いかなぁ?」

「うん、お似合いだと思うよ」

そんな風に言われて、満更でもない様子の愛衣佳。

……って、ちょっと待て待て。

この男、愛衣佳へ告白しに来たんじゃないの?

あとそもそも、遅れてきた理由も問いたださないと。

「りっちゃんとは、この学園に入ってから
 知り合ったんだけどね、最初に会ったときから―――」

「…………」

なぜか、アタシの話で盛り上がる2人。

ダメだ……愛衣佳自身、呼び出されたことも

忘れてそうだわこれ。

「それで―――」

【男子生徒】



【愛衣佳】

【律】





【男子生徒】

【愛衣佳】

【尾畑】

【愛衣佳】


【律】

【愛衣佳】



【尾畑】

【愛衣佳】





【尾畑】


【愛衣佳】

【尾畑】



【律】


【尾畑】

【律】

【愛衣佳】

【律】



【尾畑】

【愛衣佳】

【尾畑】





【愛衣佳】


【律】




【愛衣佳】

「あの、ちょっと良い?」

アタシの話を延々と続けそうな愛衣佳を制して、

言葉を挟む。

「尾畑くん……だっけ?
 2つ、聞きたい事があるんだけど」

「うん、なに?」

「呼び出し時間に遅れた理由は?」

「ああ、そうだね。まだ弁明もしてなかった。
 実はオレ、バンドやってるんだけど……」

「バンド?楽器とか弾くの?」

「まーね……って言っても、オレはボーカルだから、
 人前で何か弾くことはないんだけど」

バンドか……なんか、どっかでライブがあるみたいな話題を

聞いた気がするけど。

「で?それと遅刻した理由と何か関係があるの?」

「今度ライブやるから、みんな練習をがんばっててさ。
 今日はスタジオにドラムの機材運ぶの手伝ってて」

「それで気づいたら時間が過ぎてた……とか?」

「まぁね……ごめん、2人とも」

「そっかぁ。なら仕方ないよ。ね、りっちゃん?」

「……そうね」

ちょっと悔しいけど、思ったよりもちゃんとした理由だし。

10分遅れたくらい、目をつぶらないとかな。

「じゃあ、あともうひとつ。
 ……今日、愛衣佳を呼び出した用件は?」

「あー……言わなくても、あの手紙を読んだ時点で
 わかるとは思うけど」

「ま、普通の子ならね……」

明らかな告白の呼び出しを、果たし状だって勘違いしていた

普通じゃない子を見る。

「ん?なーに?」

「別に、なんでも」

……ま、でも彼の口ぶりを見ると、やっぱりアタシの予想が

当たりだったみたいね。

なら……。

「席、外した方が良いよね?」

「えっと……」

「ええっ!?りっちゃん、いなっくなっちゃうの!?」

「少しは空気を読みなさい、愛衣佳」

「だめ、りっちゃんも一緒にいてっ!」

「ちょ、ちょっと愛衣佳……」

チラリ、と尾畑くんの方を見ると。

「ま、香蕉さんの希望なら仕方ないか。
 少し恥ずかしいけど、構わないよ」

「ごめん……アタシのことは、
 置物だと思ってくれていいから」

そんな言葉に苦笑していた尾畑くんだったけど、

すぐに真剣な様子で愛衣佳に向き直る。

【律】



【律】


【尾畑】

【律】

【尾畑】


【律】

【尾畑】




【律】

【尾畑】


【律】

【尾畑】

【愛衣佳】

【律】



【律】


【尾畑】


【律】



【愛衣佳】

【律】




【律】

【尾畑】

【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】

【律】


【尾畑】


【律】

「……香蕉さん」

「わ、は……はいっ?」

その真面目な雰囲気に、さすがの愛衣佳もうろたえている。

「好きです。オレと付き合ってください」

そう、ストレートに告白する尾畑くん。

「え……え?えっと……」

「…………」

しかし、何が悲しくて友人が告白されるシーンを

特等席で見ないといけないんだろうか。

「あ、う……」

チラチラと、アタシに助けを求めるような視線を送る愛衣佳。

……仕方ないなぁ。

「ほら、返事は?」

「え……へ、返事?」

「告白を受けるのか、ってこと。
 はい?ごめんなさい?どっち?」

そう問いかけると、少し逡巡する様子を見せる愛衣佳。

けど、その後にハッキリとした言葉を口にする。

「……ごめんなさい」

「愛衣佳……いいの?」

「うん。
 えと……ごめんね、尾畑くん」

さっきまでの和気あいあいとした雰囲気はどこへやら、

申し訳なさそうな様子の愛衣佳。

「そっか……理由を聞いても良いかな?」

「んと……私ね、りっちゃんのことが好きなの」

「は? ちょ、ちょっと愛衣佳っ!?」

「ええと……それは、ソッチの意味で?」

「あ、ううんっ。そうじゃなくて。
 んっと……私ね、まだ恋愛ってよくわからないんだけど」

「だから、わかるまでは……それまでは、
 好きな人と一緒にいたい。その相手が、りっちゃんなんだ」

「愛衣佳……」

「そっか……うん、わかった」

「え、ちょっと。それでいいの?」

余りにもあっさりと引き下がる尾畑くんに、

つい言葉を掛けてしまう。

「好きでもない男といるより、大事な友達と
 一緒にいる方が楽しいのは当然だと思うよ?」

「いや、それはそうだろうけど……」

「あと、これ以上ムリに迫って嫌われるよりは、
 いったん引いた方がカッコイイと思わない?」

【尾畑】

【愛衣佳】


【尾畑】


【愛衣佳】

【律】



【愛衣佳】



【律】

【愛衣佳】

【律】




【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】




【尾畑】

【愛衣佳】

【律】

【尾畑】

【愛衣佳】


【愛衣佳】


【律】

【尾畑】

【律】



【尾畑】


【律】

【尾畑】

「ああ、それはそうかもね」

恋愛関係より友人関係を取った愛衣佳に合わせて、

ちゃんと計算した上で引くわけか。

結構したたかみたいね、この男。

「だから……香蕉さん」

「あ、うん。なに?」

「恋人がダメなら、オレと友達になってくれない?」

……なるほどね、そう来たか。

「んー……りっちゃんも一緒に友達になるなら、いいよ」

「は?なんでアタシ?」

「だって、りっちゃんは私と一緒にいてくれるんでしょ?
 なら、りっちゃんも仲良くなってくれないと」

「ぐっ……」

お昼に言ったアレ、ずいぶん気に入っちゃったみたいね……。

「ええと……どうかな、伊佐美さん?」

「ったく、仕方ないわね……わーったわよ。
 アタシは、別に構わないわ」

「ん、そっか。じゃあ、私もいいよ」

「ありがとう。香蕉さん、伊佐美さん。
 ……って、友達なら下の名前で呼んだ方がいいかな?」

「そうだね。別にいいよー」

「じゃあ……愛衣佳ちゃんと、りっちゃんで?」

「りっちゃんて……アタシの方はオマケなんだから、
 気を遣わなくてもいいわよ?」

愛衣佳と仲良くなるための踏み台なんだろうし。

「だーめ、りっちゃんも尾畑くんと仲良くしないとっ」

「はいはい……」

「ははっ……これからよろしくね」

「うんっ」

……ま、愛衣佳が良いなら別に構わないか。

この男も、少ししつこいけど悪いヤツじゃなさそうだし。

「……っと、ごめん。オレ、そろそろ練習行かないと」

「あ、うん。がんばってねー」

「ありがとう。じゃあね、2人とも」

「ばいばい」

手を振って、駆けていく尾畑くん。

「えへへ、お友達が増えちゃったぁ」

「いわゆる、『お友達から始めましょう』ってだけだと
 思うけどね……」

そして、大概その手のパターンは上手くいかないとも聞く。

「んじゃ、アタシ達もそろそろ帰ろうか」

「うんっ」

と、荷物のある自分たちの教室へ戻ろうとすると。

【律】




【尾畑】

【愛衣佳】

【尾畑】


【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】


【律】


【尾畑】

【律】


【愛衣佳】

【尾畑】


【愛衣佳】

【尾畑】

【律】



【愛衣佳】

【律】

【尾畑】

【愛衣佳】



【尾畑】

【愛衣佳】

【尾畑】

【律】


【愛衣佳】

【律】



【律】

【愛衣佳】

「やっほー、2人とも。相変わらず仲良いね?」

「あれ、西羽?」

1年の時に同じクラスだった西羽奏が、

1組の教室から出てくる。

「西羽さん、1組だったんだっけ?」

「うん、そうだよ?」

1組か……美浜さんのいたクラスだ。

「それより……ふふふ、見たよ見たよー?
 香蕉さん、尾畑くんにコクられてたじゃん?」

「わわ、あ、あれは……」

「ま、愛衣佳は美人だからね」

「や、やだー。りっちゃんに言われると、照れちゃうよぉ」

「へー?伊佐美が香蕉さんのことを褒めるなんて
 珍しくない?」

「頭がアレだから、褒めるところが少ないだけよ」

「えへへ……りっちゃん褒めすぎだよぉ」

「今のは褒めてないと思うよ、香蕉さん……?」

むしろ、最初の発言だって見た目のことを

言っているだけだし、褒めてるつもりはないんだけど。

「でも2人とも……ううん、特に香蕉さん。
 気をつけた方がいいと思うよ?」

「え?気をつけるって、何を?」

「尾畑くんのこと。彼、この辺りでは結構有名な
 バンドのボーカルをやってるんだけど」

「へぇ……?」

素人の集まった、ただの学生バンドかと思っていたけど。

西羽の口ぶりからすると、そんなことも無さそうかも。

「尾畑くん自身は人当たりも良いんだけど……
 ファンクラブの人達がすごくてね」

「すごい……って言うと?」

「前に、メンバーの誰だったかが女の子を口説いてた
 らしいんだけどね。ある日、その女の子がボロボロに
 レイプされて、その後に自殺しちゃったの」

「れ、レイプ!?」

「結局、犯人は見つからなかったんだけど。
 ファンクラブの連中がヤッたって噂が流れてた」

「けど、それって噂でしょ?単に、
 強姦魔か何かに襲われたってだけじゃないの?」

「似たような事件が3件立て続けに起こっても?」

「なっ……!?」

「さ、3件……?」

偶然と言うには多い件数に、ゾクゾクとした悪寒が走る。

そうなると、次はアタシ達が……?

いや、西羽以外には誰にも見られていないし。

大丈夫なはずだ……と、思う。

「あのね、尾畑くんの親は警察のお偉いさんで、多少のことは
 握りつぶせるらしいの」

「だから……あくまで噂だけど。ファンクラブのメンバーが
 起こした事件だから、公になるのを恐れた尾畑くん達が、
 その事件を隠蔽した……って言われてて」

「そんな……」

あいつが?

そんなヤツには見えなかったけど……。

「で、でも、噂……なんだよね?」

「まーね。どれも確証はないわ。彼もそうだけど、
 バンドメンバーはみんなイケメンだから、それを妬んだ
 男達が流したのかもしれないし」

言われてみれば、尾畑くんも普通に美形だった気がする。

「それなら大丈夫だよ。尾畑くんはそんなことしないし」

「えっと……なんでそう言い切れるの?」

「だって、友達だもんっ」

「愛衣佳……」

「友達、ねぇ……?」

そもそも、廊下ですれ違ったことはあったものの、

さっきまで名前も知らなかった相手だ。

それを『友達になったから信用できる』だなんて、

アタシは言えない。

「とりあえず、聞いておきたいんだけど。
 西羽はファンクラブの会員だったりするの?」

「んーん。あたしは彼らの音楽に全然興味ないし。
 そもそも、年上のガチムチ男じゃないと心惹かれないもの」

「あっそ……」

そんな、西羽のぶっちゃけ話を

聞きたかったわけじゃないんだけど。

「ファンクラブのヤツらと繋がってるんじゃないかって
 気にしてるんでしょ? そこは安心して」

「……ま、そう言うなら。
 一応、今日の事は誰にも言わないでね?」

「任せといて。
 2人も気をつけてね」

「う、うん……ありがとう、西羽さん」

【女子生徒】

【律】

 
 

【愛衣佳】

【奏】

 

【奏】

 

【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】

【奏】

 

【律】

【愛衣佳】

【奏】

 
 

【奏】

 

【愛衣佳】

【奏】

 

【律】

 
 

【奏】

 

【律】

【奏】

 
 

【愛衣佳】

【奏】

 

【律】

 

【奏】

【律】

【愛衣佳】

 
 
 
 

【奏】

 

【奏】

 
 

【律】

 
 

【愛衣佳】

【奏】

 
 
 

【愛衣佳】

【奏】

【愛衣佳】

【律】

【奏】

 
 
 
 

【律】

 

【奏】

 

【律】

 
 

【奏】

 

【律】

 

【奏】

 

【愛衣佳】

西羽の話を聞いたせいだろう、愛衣佳も不安そうだ。

尾畑くんのことは信じると言ったものの、

きな臭いファンクラブの連中はそうもいかない。

……アタシが、ちゃんと護ってあげないとな。





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