序幕

世界は、人は、狂っている。
不条理に満ちた世界で、『彼女』は手を差し伸べる。

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世界は、人は、狂っている。

それは、もしかしたらごく一部なのかもしれないけど。

でも、この小さな街でさえ、理不尽な怒りと憎しみに

満ちている。

例えば、こんな風に。

「や、だ……やめ、てよぉ……!」

「いーから、股開けっつってんだろ!じゃねぇと……」

「ひっ!?や、やだ、わかった、わかったからぁ。
 そのナイフ、しまってよぉ……」

「チッ……わかりゃーいいんだよ」

これが、狂ってないと言えるだろうか?

……いや、そうは思えない。

「くっ……はぁ、はぁ、はぁっ。イ、イクぞっ……!」

「えっ……!?やだ、そ、外!外にだして!」

「あぁ……?ドコに射精そうが、
 くっ……俺の、勝手だろうが……!」

「や、やだやだ、やめて、お願いだから!
 今日は、危ない日なの!」

「んじゃあ、今日が種付け記念日ってわけか。
 オラ、もう射精るから、しっかり受け止めろよ……!」

「だ、だめ!やめっ……んくっ、は、あぁっ!」

「はっ、はっ、で、射精る……!く、うあっ……!!」

「んくうぅぅっっっ!!」

「はぁ、はぁ、はぁ……そ、そん、な……。
 ほんとに、ナカ……で……」

「ふぅ……んじゃ、また会社でな。これからは、
 あんまり男のことナメんじゃねーぞ?ヒャハハッ」

欲望を吐き出した男性は、さっさとその場を離れていく。

「ふ、ぐっ……う、は、あっ……!ひぐ、うっ……!!」

「憎いですか?」

「……えっ?」

こちらを見上げた女性が、突然現れた人影に息を呑む。






【若い女性】

【若い男性】

【若い女性】


【若い男性】


【若い男性】

【若い女性】

【若い男性】

【若い女性】


【若い男性】

【若い女性】

【若い男性】

【若い女性】

【若い女性】


【若い男性】


【若い女性】

【???】

【若い女性】

「あ、あなた、今の見て……!?」

その言葉に、小さく頷く。

「あなたをそんな目に遭わせた人が、
 憎いのではないですか?」

そんな問いに、彼女は小さく言葉を漏らす。

「憎くないわけ……ない、じゃない……」

「当たり前でしょ!あの男、職場であんまり
 言い寄ってくるから、振ってやっただけなのに!
 こんな……まさか、力任せにスルだなんて」

彼女の口からは、同僚だという先ほどの男に対する恨みの言葉があふれ出す。

「絶対に……絶対に、復讐してやる!
 どんな手を使っても!誰を巻き込んでも!!」

「そうですか……わかりました」

「わかりました、って……」

「その力を、あなたに与えます」

「……え?」

【若い女性】


【???】



【若い女性】

【若い女性】





【若い女性】


【???】

【若い女性】

【???】

【若い女性】

だから、手を差し伸べる。

そんな、狂った心を癒やすために。

なぜなら、僕は―――

「わかりました、って……」

「その力を、あなたに与えます」

「……え?」

だから、手を差し伸べる。

そんな、狂った心を癒やすために。

なぜなら、僕は―――




【若い女性】

【???】

【若い女性】

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