そして今日もまた、憂鬱な帰り道を1人歩く。

「ふぅ……」

もう少し、学校で時間を潰してもよかったかもしれない。

……ま、いいか。

今日はアイツ、出かけるって言ってたし。

「ん、っと……」

『願いを叶えるサイト』……か。

確か、検索ワードは……。

「っ……やめやめ」

携帯を操作する手を止めて、ポケットにしまいこむ。

「なんでも願いが叶うなんて……。
 そんなこと、あるわけない」

そう、そんなことが可能なら、私は―――

「本当に、そう思いますか?」

「っ!?」


【詠】




【詠】



【詠】


【詠】



【???】

【詠】

いつ、私の前に来たのか。

目の前には、少し年下に見える女の子が立っていた。

外人さん……だよね?

「願っていれば、なんだって叶えられるかもしれませんよ?」

「え……っと」

ずいぶん何でも無いように話しかけてくるけど、

知り合い……じゃ、ないはず。

そもそも、こんな綺麗な金髪の女の子、

一度見たら忘れられるわけ無いだろうし。

「突然話しかけてすみません。
 でも、そんなに警戒しないでください」

「あ、ご……ごめんなさい」

流暢な日本語……。

ずっとこっちに住んでる子かな?

「僕、最近この辺りに来たんですけど。
 物騒な事件が起こったりしているみたいですね」

「あぁ……そう、ですね」

近隣の街で立て続けに起こった、殺人事件のことだろう。

歌音も言っていたけど、

犯人も捕まってないし、物騒と言われればそうかもしれない。

それにしても、この子って女の子……だよね?

自分の事を『僕』って言うんだ?

見た目とのギャップもあって、なんだか可愛いかも。

「いざとなったら、平気で知っている人を殺してしまう。
 逆に言えば、殺されるほど相手を追い詰めてしまう。
 そんな、人間同士の醜いいざこざが原因かもしれません」




【少女】

【詠】





【少女】


【詠】



【少女】


【詠】







【少女】

「えっと……?」

もしかして、変な子……なの?

余り関わらない方が良い?

「そのような部分が、自分に向いたらどうなって
 しまうんでしょう?事件の犯人のように、
 醜くて恐ろしい存在となってしまうのでしょうか?」

そもそも、まだ犯人も捕まっていないみたいだから、

『醜い』上に『恐ろしい』のかはわからないんだけど。

まるでこの子、殺した人を知っているみたい。

「さ、さぁ……私には、ちょっとわからないかな」

「わからないのですか?あなたなら、
 理解できると思ったんですけど……美浜詠さん」

「……は?」

え……なんで私の名前をっ!?

「過剰な家庭内暴力、性的な虐待……その果てに待つのは
 なんなのでしょう?」

「あ、アンタ、一体……!?」

「神浦小夜……と、言います。
 よろしくお願いしますね」

見た目に合わない純和風な名前を口にした女の子が、

無邪気に微笑む。

その表情を見た瞬間、背筋にゾクゾクとした

悪寒が駆け上がって……。

「っ……!」

【詠】



【少女】






【詠】

【少女】


【詠】


【少女】


【詠】

【小夜】






【詠】

小夜と名乗った女の子が恐ろしくなった私は、

何も答えずにその場を去ろうとする。

「渦巻く物が、例え憎しみに彩られた
 負の感情に依る物だったとしても」

「……え?」

「それでも、何か強い願いがあるのならば。
 信じてみるのも良いんじゃないでしょうか」

さっきから、この子は何を言ってるの?

なんで……まるで、全てを知っているようなことを言うの?

関わり合いになってはいけない。

そう考えた私は、今度こそ立ち去ろうと

女の子から目を逸らして歩き出す。

「自分から行動しないと、現実は何も変わりません。
 詠さんの憎しみも、嘆きも、
 誰も消し去ってはくれないですよ?」

「なっ……!? あ、アン―――」

『アンタに何が分かるの!?』

そう言おうとして顔を上げると。

「……あ、れ?」

金髪の女の子は、影も形もなくなっていた。



【小夜】


【詠】

【小夜】







【小夜】



【詠】



【詠】

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