「愛衣佳ー。ご飯の時間だぞー」

「あれぇ?りっちゃんはコンビニじゃないの?」

「1週間連続はさすがに飽きた」

「飽きるの早くなーい?」

「いーの。購買の方が安いし」

「そうだけどぉ」

昼休みでざわつく教室の中、愛衣佳と一緒に教室を出る。

「ねぇ、知ってる?あのニュースの……」
「あ~、あれでしょ?1組の……美浜さん、だっけ?」
「そうそう、すごかったらしいよ。
 部屋中、血で真っ赤だったんだって」
「うえぇ……これからお昼だっていうのに、
 やめてよそういう話~」
「あはは、ゴメンゴメン。
 んじゃ、話を変えて……来週のライブどうする?」
「あっ、尾畑くんの?行くよー」
「おっけー。んじゃ、ナオ達も入れて、4人ね。
 でさぁ―――」

そんな、クラスメイトの会話を聞くともなしに聞く。

「…………」

先週のことだ。

1組の美浜詠さんの一家が、

何者かにより殺されたらしい。

ただ、その死体の中には美浜さんの姿が無かったため、

犯人に拉致されたんじゃないかとか、実は彼女が殺して

逃げたんじゃないか、なんて校内では噂されている。

ニュースでは警察も探しているって言ってたけど、

まだ見つかっていないみたいだ。

「りっちゃんは、知り合い……だったんだっけ?」

「一緒の小学校で、同じクラスになった事があるって
 だけだけどね。余り喋らない子だったから、
 会話したことはほとんど無いよ」

「そっかぁ……犯人、早く見つかるといいね」

「うん……だね」

言葉通り、彼女とは特別に何かあったわけではない。

ただの、昔のクラスメイトだ。

なのに、やっぱり知ってる人がそういう事件に

巻き込まれたのは、気持ちの良いものじゃない。

「けど、怖いな……近くに犯人がいるかも
 しれないんだもんね」

【律】

【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】


【女子生徒A】
【女子生徒B】
【女子生徒A】

【女子生徒B】

【女子生徒A】

【女子生徒B】
【女子生徒A】


【律】









【愛衣佳】

【律】



【愛衣佳】

【律】





【愛衣佳】

「愛衣佳はあんまり怖がる必要ないって。
 何かあっても、アタシが護ってやるから」

「え、ほんとぉ?わーいっ!
 りっちゃんなら、ミサイル撃たれても平気だよねっ」

「平気じゃない!
 それはさすがに、心中してよ!?」

「安らかに眠ってね、りっちゃん……」

「ってコラ、1人だけ生き延びるつもり?」

「うん。まだやりたいこと沢山あるからね~」

「そんなの、アタシもあるに決まってんでしょ!」

「じゃあ、りっちゃんも一緒に生き延びよ?」

「もぉ……ならいいけどさ」

その、優しい微笑みの前では、

それ以上の言葉を続けられなくなってしまう。

本当、愛衣佳は仕方ないヤツだ。

「えへへ~。けど、りっちゃんの腹筋に埋もれて死ぬなら
 本望かも~?」

「言われるほど無いわよっ!?」

……仕方ないというか、しょうもないヤツなのかも。

昼食も終わり、ダラダラとダベっている時のこと。

ガラにも無く神妙な顔をした愛衣佳から、

突然、衝撃の事実を告げられる。

【律】


【愛衣佳】


【律】


【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】

【律】




【愛衣佳】


【律】

「は?手紙?」

「うん、これなんだけど……」

そう言って差し出してきた封筒は、

とてもシンプルな物だった。

「ええと……?『香蕉愛衣佳さんへ。
 お話ししたいことがあります。放課後、4組の教室前に
 来てもらえますでしょうか』」

名前は……うん、無いみたいね。

「わ、わあぁっ!声に出しちゃダメだよぉ!」

「別に誰も聞いてないから、気にする必要ないって。
 それより、これってまさか……」

「う、うん……やっぱり、そうかな」

「そうね……ちょっと驚いちゃったけど」

「……果たし状、だよね?」

「んなわけないでしょ!?」

愛衣佳のボケっぷりに、頭を抱えたくなる。

しかも多分、本気だ。

「違うの?」

「違うわよ。どう見ても、ラブレターでしょーが」

「……へ?らぶ、れたー?」

「なにを驚いてんの」

「え……だ、だって、私だよぉ?
 ラブレターなんて送って、どうしようって言うの?
 果たし合い?」

「どうあっても果たし合いたいの、愛衣佳は?」

見た目に似合わず、血に飢えてるのかしら。

「でも、違うなら……う~ん?
 あ、カツアゲ?」

「だから、ラブレターだって言ってるでしょうが。
 愛衣佳と男女のお付き合いをしたがってんのよ」

「え……ええぇぇっ!?」

愛衣佳にとっては予想もしていなかったのか、

クラス中に響き渡る音量で叫ぶ。

「ちょ、あ、愛衣佳!叫ぶの禁止!」

「わわ、ご、ごめんなさい……」

クラス全員の視線を独り占めにした愛衣佳だったけど、

昼休み中ということもあってか、それも数秒のことだった。

「ううう、どど、ど~しよぉ、りっちゃぁん……」

「んなこと言われても……アタシだってその手の経験が
 無いこと、知ってるでしょ?」

「経験無いのに、これがラブレターってわかるの?
 りっちゃんは耳年増?それとも痴女?」

「こんなあからさまなラブレター読まされて、
 なんで痴女呼ばわりされないといけないのよ」

「だってだって、私はわかんなかったのに~」

「アタシは愛衣佳みたいに天然じゃないからね」

「りっちゃんひどいー!
 やっぱり、本当は果たし状かもしれないよ?」

「そんなにケンカしたいの、愛衣佳は?」

「だ、だってぇ……」

照れ隠しなんだろう。愛衣佳の頬は、

みるみる内に赤く染まっていく。

「りっちゃぁん……これ、一緒に来てぇ?」

「は?なんでアタシが?」

「だって、言ったもん……」

「言ったもん、って。なにをよ?」

「りっちゃん、愛衣佳のことを護るって言ったもんっ!
 すっごい渋い声で!」

どどーん、と効果音でも付きそうなほど

堂々と言う愛衣佳。

「渋い声なんか出してないでしょ」

「でも、護るって言ったよ!」

「ぐっ……そ、それはそうだけど」

【律】

【愛衣佳】



【律】




【愛衣佳】

【律】


【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】

【律】



【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】



【律】


【愛衣佳】


【律】


【愛衣佳】



【律】

【愛衣佳】



【愛衣佳】

【律】


【愛衣佳】


【律】


【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】


【律】

【愛衣佳】



【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】

【律】

【愛衣佳】




【律】

【愛衣佳】

【律】

「だから、付いてきて?ね?」

「…………」

まったく、愛衣佳は……。

「だめ、かなぁ……?」

「はぁ……もう、しょーがないわね」

そんな風に親友から頼まれて、断れるわけがない。

「わーったわよ。一緒についてってあげる」

「りっちゃん……!」

ぱあぁ、と顔をほころばせる愛衣佳。

「大好きっ!!」

「うぐっ」

思い切り抱きつかれて、少し苦しいと思ったけど。

それよりも、こんなに可愛らしい親友に目を付けた男が

いることに、少し心が浮き足立っていた。

【愛衣佳】

【律】


【愛衣佳】

【律】


【律】

【愛衣佳】


【愛衣佳】

【律】

次の場面に進む

クリックすると第弐話其ノ二へ進みます。